韓国はなぜ反日にこだわるのでしょうか?

結論から言うと、韓国においては「反日」が韓国社会の一体性を保つための中心概念になっているからです。
集団や組織内での価値の源泉というのは、突き詰めて考えるとその一体性ということになります。人間の場合、人間社会の一体性というのは無条件には与えられていません。人間は社会的動物だとか教科書には書いてあったりするのですが、100人程度の集団なら自然と一体性というものも発生するでしょうが、広域社会における一体性を形成するためには、歴史的な跳躍が必要となります。


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巨大社会において一体性を保つための技法というのはいくつかあります。もっとも簡単で有力なのが、唯一の神を設定して一神教的宗教で社会の一体性を担保する、というやり方です。ユダヤ教がこの技法の始まりで、キリスト教やイスラム教に引き継がれていきました。

他にも、例えばローマ帝国の一体性の根拠というのは、帝国の巨大化という理念です。ローマ帝国は領土の巨大化を実現してしまって、その一体性の根拠である理念が失われてしまったら直ちに弱体化してしまいます。ローマ帝国は一体性の崩壊を回避しようとしてキリスト教を国教にしたりするのですが、一体性の崩壊を食い止めることができませんでした。

東アジアにおいて社会の一体性の根拠というのは儒教になります。
現代日本は儒教とは関係ないと思っている人は多いと思いますが、日本もがっつり儒教圏です。
儒教(正確には朱子学なのですが)における社会の一体性を維持するための技法のというのは、正しいとされる理念を設定して、その理念により近づくために社会の構成員が互いに競争するよう仕向けるということです。

このことは言葉で書き表すと奇妙に響くのですが、日本社会も実際に儒教的社会構造になっています。戦後の日本で正しいとされた理念というのは、民主主義、市場経済、合理性などの徳目の関係性ということになります。戦後の日本社会というのは、民主主義、市場経済、合理性の徳目をめぐって国民が互いに競争して、国民全体が結果として中産階級を目指すことで社会の一体性を担保しようとする社会でした。

韓国においてもこれと同様なのですが、日本と異なるのは韓国内で正しいとされる徳目の中に「反日」が入っていることです。ですから、反日思想が社会的に評価されるような構造になっています。

日本においてはメディアに民主主義専門家や合理性専門家のような人物が登場してもっともらしいことを語るのと同様に、韓国においてはメディアに反日専門家なる人物が登場してもっともらしいことを語ります。
そしてこのもっともらしい言説を理解できないとバカのレッテルを貼られてしまうので、社会の周辺部の人はともかく、社会の中心にいると自覚している人は設定によって正しいとされただけの言論を簡単に受け入れてしまうのです。受け入れないとバカ扱いですから。

韓国の行動は一見奇妙に見えるのですが、日本も同じような儒教的枠組みで社会が成立している部分もあるわけで、あまり韓国を100%否定するのもどうなのでしょうか。ただ日韓両国の理念をめぐる(儒教的には「理」という)争いですから、妥協の余地もあまりないのですが。


最期に
日本の立場に立ってここまでの日韓の関係性の流れを簡単にまとめます。

1 1910年に日韓併合条約によって大韓帝国(現在の韓国と北朝鮮)は日本の一部となった。これを韓国は日本の侵略であったとしている。日本としては日韓併合は難しい世界情勢の中で日韓が共に生存していくための戦略であったと主張したいのだけれど、当時、日本人には朝鮮人に対する強い差別意識があって、戦後日本においては、日韓併合には日本の韓国に対する侵略の面があったと認めるのが普通。

2 戦後、韓国は第二次世界大戦において日本と戦った戦勝国であるという論理を展開するのだけれど、飛躍した論理だけに国際的に認められず、日韓の間で国交の正常化が遅れていた。
日本としては第二次世界大戦当時、韓国は日本だったわけで、韓国が戦勝国であるというのは認められないという立場で、韓国としては第二次世界大戦当時、中国戦線で韓国人の反日組織が日本軍と戦ったという事実により韓国は戦勝国であるという立場。
1965年、アメリカの仲介で、日本と韓国は韓国内にある日本資産の放棄、韓国への5億ドルの補償金などにより、日韓両国間の請求権の「完全かつ最終的」な取り決めとして、日韓基本条約が結ばれた。

3 2018年、戦中に日本で働かされた韓国人に当の日本企業が賠償しろという判決が韓国の最高裁で出された。日本は日韓基本条約違反であると反発。

4 2019年8月 日本は韓国を輸出管理の優遇対象国から除外するという報復行動に出る。

5 同年同月 韓国は日韓軍事協定破棄を決定。