大型ショッピングモールで原因不明のパニック型事故が起こり何十人も死亡する。この事故にかかわった人たちの対話によって事故原因が明らかになるだろうという体裁でこの小説は成立している。

事故原因なるものは明らかにならないままこの小説は終わる。私は恩田陸の「真夜中の小夜子」「黒と茶の幻想」「ねじの回転」「黄昏の百合の骨」の4つの小説を読んだけれども、事件の根本原因が明らかになったことなど1度もなかった。

恩田陸には、真理は明らかにされるべきだというミステリーの基本的枠組みを踏襲する気などさらさらないのだろう。

恩田陸の小説パターンというのは、何か不条理な事象が与えられて、その不条理を受け入れられる人間と受け入れられない人間との相克というものだ。恩田陸の小説世界では不条理を受け入れられる人間を優位に描いているので、不条理は解明されるはずもない。

恩田陸的不条理というのは、特別な女性を神輿の上に掲げながら進行していく。「黒と茶の幻想」では一人芝居をする美人女学生だったし、「ねじの回転」ではネコだったね、ネコ。この「Q&A」では、事故後のショッピングモール内を血塗られたぬいぐるみを引きずって歩く二歳の女の子。

特別な女性を伴って進行する不条理現象とは、すなわちこれ祭りだね。ショッピングモールのパニック事故も祭りの様相を呈している。

祭りの内部においては、なぜ祭りなどというものがあるのかと問うような合理性はさかしらであって、大きな一体性にわが身を任せることが重要とされる。

「Q&A」でも、パニック事故の原因を確定しようとする者は排除されている。

祭りにおいては時間の観念も重要だ。合理的世界観においては、時間とは無限の過去から無限の未来に向かって進歩発展をともないながら一直線に進むもの、という認識になる。ところが、祭り世界においては、時間は循環するという認識になりがちだ。ニーチェ永劫回帰もこのパターンだろう。

「Q&A」でも、祭り上げられた特別の少女のところに、突然未来の本人が尋ねてきていろいろアドバイスをする。今の少女も未来ではかつての自分のところに戻り同じアドバイスをするようになるだろう。完全な時間循環とはいかないけれども、何らかの循環が期待されている。そもそも、恩田陸はそのような時間循環を期待して、未来の少女が現代の少女を突然訪ねてくるというSF的な設定を、この小説に突然割り込ませてきたのだろう。



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