恩田陸「三月は深き紅の淵を」という小説の中で、繰り返し語られた、決して読むことの出来ない幻の本がありまして、実際に書かれた小説がこれということになりますね。


ストーリーは、学生時代の友人である利枝子、節子、彰彦、蒔生(まきお)。
30代後半になった彼らは久しぶりに再会し、伝説の桜を見に行くという目的で、屋久島散策に出かけるというもの。

大学時代の友人である梨枝子、彰彦、蒔生、節子の男女4人が40歳近くになって、屋久島に3泊4日の旅行に行って、学生のころの謎についていろいろ話し合う。

謎といってもたいしたものではない。あのカップルはなぜ別れてしまったのかとか、あの変わり者だった同級生の女の子は今どうしているのかとか、基本的に私たちの同窓会での会話と大差はない。

でもこういうのってすごく楽しかったりする。

男同士で過去を語り合ってもたいしたことはないのだけれど、そこに女性が加わると話の厚みがぐっと増すというのはある。「黒と茶の幻想」は全編そんな感じですごく面白い。

「黒と茶の幻想」での謎を紹介してもいいのですが、こういうのは雰囲気を楽しむもの。

ですから、この本を読んで思い出した、かつて私の参加した同窓会で語られたある男と女の謎とその解答を書いてみたいと思います。


私は大学時代は体育会でバレーをやっていた。男子バレー部と女子バレー部は仲がよかった。私と同学年に高林という男がいて、こいつはうちの大学バレー部のスーパーエースだった。

高林は190近い長身で頭の回転も速かった。女の子に十分もてるレベルだったろう。ただ性格がゲスだった。私は彼のゲスなところが嫌いではなかったけれど。

この高林は1学年下の女子バレー部の女の子と付き合っていたのだけれど、卒業後に2人は別れてしまって、高林は彼女をストーカーするようになったという。互いに大人だしそのうち折り合いをつけたのだろう。別に事件なんていうものにも発展しなかった。よくある話だろう。

20年の時が流れた。

名古屋の名駅の裏の居酒屋で同期の男子バレー部と女子バレー部の同窓会があった。女の子はかわいいまま、昔と変わらない。お前ら美魔女か。

二次会になる。メンバーも絞られる。高林の話になった。なんで高君はストーカーなんてしたのかっていう、熟成された「謎」の登場だ。

まず私が、

「あいつは性格がゲスいから、ストーカーなんていかにもやりそうだ。結局、自分に正直なんだと思うよ」

といってみた。するとある女の子が、

「でも高林君って性格ゲスいかな? 今日も一次会に子供連れてきて、子供を可愛がってたじゃん?」
と言う。まあまあ、高林も立ち直ったのかもしれないねなんて言おうと思ったら、今までニコニコ話を聞いていた我らが女バレのヒロインが、突然このようなことを言う。

「そういえば私、高林君に言われたことがある」

「何を?」

「一発やらせろって。体育館の裏で。減るもんじゃないんだから一発やらせろって。最低って思った」

すばらしい告白だ。ここちょっと押してやれ。

「高林は、そのことをヒロインにだけ言ったのかな?、他の女の子には言っていないのかな?」

「絶対言っているよ。高林君のあの彼女も言われてるよ。あの子、真面目だったから真に受けたんじゃないの?」 

「ゲスいことを言って付き合って振られてストーカーというんだから高林は確かにゲスいでしょう? そこがアイツの正直なところなんだけれど」



謎はすべて解けた。



今回は真理を私の論理に引き付けて解決したけれど、引き付けて引き付けられて、そして謎が解決されていくならすごくリアルで楽しいだろう。

でも年をとるとなかなか旧友と時間を合わせてかつての謎を解くなんてのもまれなわけで、3泊4日の旅行で過去と向き合えるこの小説の主人公たちがうらやましい。

この小説は、これだけ読んで面白いというものでもないだろう。若いころに男女のグループで真剣にかつ軽い感じできゃいきゃいやった世代向けだと思う。


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