結婚式に呼ぶ友達がいないとか、ぜんぜん問題ない。

もう10年以上前だ。私には2つ年下の妹がいて、今度結婚したから親戚同士の顔合わせをしたいと言ってきた。私と妹は仲はいいほうだと思う。妹は早稲田を卒業してそこそこの企業に就職して、そこの年上の部下と付き合っていた。私としては、あの健ちゃんと結婚するんだね、おめでとう、みたいな感じだ。私の妹は性格がきつく金に辛い。私は結婚式等というくだらないものに私の貯金を1円も使いたくないと宣言していた。というわけで今回、新郎側の親が全額出すことによって、新郎新婦の親戚同士が食事会をするということなったと、妹が実際私にこのように説明した。 

                                                      
私たち兄弟は岡山県生まれなのだけれども、大学から東京にでてしまった。うちの両親というのは妹が就職したぐらいに2人とも死んじゃって、結局2人して田舎から切れてしまったんだよね。妹が親戚同士の食事会で呼べる人間は私しかいない。 
                                                  
妹に呼ばれて、私は待ち合わせの埼玉県の川口市のホテルに行った。これが思ったよりいいホテルで、食事会にしては不思議な感じがしたのだけれど、向こうのご両親もちょっと頑張った、1人あたり2万ぐらいのコースかななどと思ってホテルを入ってズンズンいくと、妹がウエディングドレスを着ているんだよね。
           
「キミ、なにそんなものを着ているの?」

いや、親戚同志の食事会ではないのかと、ウエディングドレスでは食事会と違うよね。
             
「まあまあお兄ちゃん、お兄ちゃんの席はあるからちょっと座ってて」
                       
こんな感じで手なずけられた。結局、向こうの親戚は25人ぐらいはいたと思う。食事会というよりは、簡単な結婚式風な感じで状況は展開していった。でそのうち司会者の人が、新婦側からのスピーチをお兄さまから、なんていうことを言い出した。
いやこれはやばいよ、食事会だと思っておなかをすかせてのこのこやってきたら、ぶっつけ本番、妹の結婚式のスピーチだというのだから。
                                               まず思ったのはずうずうしくやらなくてはいけないということ。そもそも妹だって、新郎の親戚25人の中に私一人をずうずうしくも呼んで澄ました顔で目の前に座っているのだから、この上をかぶせていく必要がある。兄なのだから妹の結婚式のスピーチは当たり前みたに堂々と立ち上がり、全く当たり前のようにマイクの前に立つ。もちろんスピーチのためのカンニングペーパーなどは出さない、そもそもないから。

さてここからどうするか。

妹の両親はすでに死んでいるというということをまずアピールした。本当はこの場所で父や母が話すべきだったと思いますが、両親共に亡くなっているので私が挨拶させていただきます、みたいな感じ。これは効いた。ちょっと場がシーンとなった。ここちょっと押せるんじゃないの、という感触をつかんだ。父親は妹のウエディングドレスを見たいといっていたとか、母親は健治さんなら妹を嫁がせても心配ないといっていたとか、死人にくちなしみたいなことを喋った記憶がある。
妹は帰り際に、 
                                                      
「今日はありがとう」

とニヤニヤしながらいっていた。そのずうずうしさ。妹よ、キミはだんだん死んだ母親に似てきたよ。


関連記事/
死んだ父親について
死んだ母親について
死んだクラスメートについて
結婚した妹について
お名前.com