村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」の主人公「僕」は法律事務所を退職して現在無職。出版社に勤める妻がいる。
飼っているネコがいなくなって、マルタという女性にネコの探索を依頼する。

「海辺のカフカ」でも中田さんの職業がネコ探しだった。そういえば「ノルウェイの森」では、主人公の引っ越し先の下宿にネコが訪ねてきていた。そのネコを探しているのか。

いなくなったネコを探しに、主人公の「僕」は近所の空き家の庭先に行く。そこに井戸があって、石を落としてみたけれど、どうやら水は枯れてしまっているらしい。

井戸? そういえば「ノルウェイの森」で直子が、この辺りには誰も知らない深い井戸があるのよ、なんて言っていた。

井戸のある空き家の向かいに16歳の女の子が住んでいる。例えば彼女のかつらについての考察。
「それでね、まあとにかく、もしあなたがかつらを使っていて、二年たってそれが使えなくなったとして、あなたはこんなふうに思うかしら? うん、このかつらは消耗した。もう使えない。でも新しく買い替えるとお金もかかるし、だから僕は明日からかつらなしで会社に行こうって、そんな風におもえるかしら?」

ん? これは「ノルウェイの森」の緑の口調そのままだろう。
緑の家の裏の空き家の庭に井戸? 

ネコを捜すマルタの妹はクレタという名前で、マルタの助手をしている。クレタの告白によると、彼女は二十歳まで非常な痛みに苦しんできたという。生理痛はひどいし、飛行機やエレベーターに乗ると気圧の関係か頭がガンガンするし、傷は治りにくいし。痛みというのは人に伝えられない。孤独に苦しんで二十歳の誕生日に自殺しようと思っていたのだけれど、二十歳を過ぎたら急に痛みが人並みになったという。
しかし気づいたことは、今までは精神と肉体を痛みがつないでいたということ。痛みがなくなって精神と肉体との間に距離が出来てしまったかのように感じるという。

「ノルウェイの森」の直子のカリカチュア? マルタのファッションというのは、1960年代のファッション雑誌のモデルそのままの野暮ったいもの。「ノルウェイの森」の時代設定もそれぐらいだった。

小説というのは基本的に、まあなんというか現実世界の真理やリアリティーを探求するという面があると思うのだけれど、この「ねじまき鳥クロニクル」という小説は第1部を読む限り、村上春樹世界を探求するという方向に舵が切られている。
こうなると、村上春樹ファンにとってはたまらないけれど、アンチ村上春樹にとっては全くどうでもいいということになるだろう。

私個人としては、意味があるか分からないような井戸やネコ探しに興味が出てきた感じで、何だか少しハルキスト。
第2部、予言する鳥編に続きます。

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