刑務官の南郷と傷害致死で仮出獄中の三上の二人が、匿名者の依頼により死刑囚樹原の冤罪を証明しようというミステリー小説だった。
南郷は仕事で死刑執行に立会った結果精神的に不安定になる。自分が死刑囚を殺したみたいな。だから死刑囚の冤罪を晴らして贖罪したいということらしい。
気持ちは分かるけど考えすぎだろう。そんなことを言ったら、オウム関連の死刑囚の死刑執行命令書に立て続けにはんこを押した今の法務大臣はどうするの?ということにもなる。
傷害致死で仮出獄中の三上は、殺してしまった相手の保障に親が7000万出して親の小さい工場が傾いてしまった。親の苦労を見かねて冤罪証明の成功報酬1000万が欲しいという。
そもそも親が子供の不始末に7000万出すというのがおかしい。子供といっても三上は成人しているのだから自分で払わなくてはならないだろう。

このように精神的状況としてある一定レベル以上にあり、そのことにあまり気がついてないような二人が、天涯孤独でかつ強盗殺人の冤罪で死刑判決を受けたという樹原を救おうという、よく考えるとありがたい話みたいな感じだよね。
「13階段」の映画は三上に焦点を合わせすぎていて、ありがたい話が当たり前の話みたいになってしまっていた。

犯人なんだけれど、これがまた探偵役の二人にさらに輪をかけてありがたい人だった。この話をトータルで考えると、ありがたい人たちが天上界で争った結果、たまたま蜘蛛の糸が一本地獄におろされて、死刑囚のカンダタがうまくそれをつかんだということになるだろう。