内容としては、北海道でパンでミックが起きてそれに立ち向かうマッチョな自衛隊員目線のパニック物だった。

全体の話の整合性としてはどうかと思わせる部分も多かったけれども、パニック物だし細かいところにこだわって読むほどの事もないだろう。読ませる筆力というのはあった。
気になったのは、パンでミックにあたって日本政府首脳の対応のグズグズさかげんの描写だ。

主人公の自衛隊員と総理ならびに関連大臣との対話場面も多いのだけれど、主人公の自衛隊員が感情むき出しで大臣にくってかかっている。総理の事を馬鹿だ豚だとかひどい。小説の設定としては主人公の自衛隊員が真理を握っているから、真理を知らないヤツを豚呼ばわりというのもなくはないとは思うけれど、総理は小説の真理設定は知らないわけだしそこまで言わなくてもとは思う。
この小説の語り手は基本的に主人公の自衛隊員なのだけれど、総理ならびに関連大臣批判では、いったいこれ誰が語ってるの?作者が勝手に語り出してない? なんていう部分もあった。

作者にこの小説を書かせたエネルギーというのは、けっきょく福島原発のあの事故および政府の事故対応についての思いということだろう。
気持ちは分からなくもない。福島原発の文字通りの爆発を表現して当時の枝野官房長官が「爆発的事象」とテレビで言ったときにはこの世界の終わり感ははんぱなかった。

映画の「シンゴジラ」や「君の名は」が異常な大ヒットを飛ばしたのは、福島原発の事故がこれらの映画世界にリアリティーを与えたというがあると思う。この「生存者ゼロ」という小説が「このミス」大賞を受賞したのも同じ流れだろう。

そうだとするなら、主人公の自衛隊員および作者の政府に対する怒りの言葉も、なんだかちょっと切ないような気持ちにさせる。