「本が好き」内のレビュアーさんが、初野晴という現代小説家の作品を紹介していたので、読んでみることにした。
初野晴って知らなかった。近所のブックオフで探してみると、実際あるんだよね。この「退出ゲーム」という本を選択してみる。表紙がクールな少女マンガテイストで、裏表紙にイケメン風の初野晴の写真が載っている。
信頼できるレビュアーさんの書評を読まなかったなら、まずもって選択しないような種類の本だと思った。

実際に読んでみたのだけれど、これがまずまず面白い。
「退出ゲーム」は、4つの短編からなる連作短編集だった。高校1年の男の子と女の子がコンビで学園のちょっとした謎を解くというコミカルミステリーで、トータルの出来は悪くないと思った。

主人公の高1の女の子は、学校の若い男性教師にあこがれている。そして、中盤あたりでこのように独白する。

「実は、先生を追いかけている私自身が好きなの!」

これはある。
私には2つ下の妹がいる。この妹が、この主人公と同じように高校時代、若い先生を好きになって、「今日、シゲタ先生とこんなことをしゃべった」とか、「今日、シゲタ先生はこんなにかっこよかった」とか、ちょくちょく私に報告してくれていた。
妹も高校を卒業して大学生になった。
妹が高校の同窓会に行った。ニコニコしながら、私にそのときの様子を報告するんだよね。

「お兄ちゃん!、シゲタ先生にホテル誘われたんよー」
「シゲタ先生って、君が高校の時に好きだったあのシゲタ先生?」
「そうそう、帰りに先生に車で送ってもらったんよー。そしたら先生、車をラブホテルの前で止めて、入ろうか、って言うんよー」
「えっ、シゲタ先生ってそういう人だったの?」
「あー、わたしゃー勝ったー思うたねー」

兄として、意を決して聞いたね。

「それで、ホテルには入ったの?」
「入りゃーせんよ。丁重にお断りしたよ」

兄としてほっとしたと同時に、女性の強さというものを知った。

この本を読んで昔の事を思い出した。