主人公のカストルプ青年は、就職前にちょっと気晴らしみたいな感じで、アルプスのふもとの療養所に3週間の予定で滞在する。 しかし、この療養所って結核療養時だろう。 カストルプは3週間目に熱がでて、療養所滞在無期延長みたいになるのだけれど、これって結核がうつったんじゃないのかな。 おまけにみんな煙草とか吸っているし。結核に煙草ってよくないでしょう。  この療養所にいる人たちは、科学とか文明とかをよく問題にしたりするのだけれど、熱く科学を語るワリには、いまいちな認識レベルだろう。 こういうところは面白い。100年たったら、私達の医学も批判されることもあるのだろう。古びるもの古びないもの、そういうのってあるよ。   あと、カストルプ青年が暮らすこの療養所の利用料金なのだけれど、1週間で160フランというんだよね。カストルプはこれを安いという。では、160フランとは現代の円換算でいくらなのか?  第一次世界大戦前のフランスは金本位制で、1フランは金9/31 gに固定されていた。これを現在の円換算にすると、金1g5000円として、1フラン1450円となる。160フランは13万2千円だ。 1週間で13万2千円だから、1ヶ月で53万円となる。 これは安いだろうか?  カストルプ青年は若くして両親が死んで、その遺産を引き継いで1ヶ月53万円以上の不労所得があった。 金利収入が年1000万として、利率が5パーだとすると総資産は2億円ということになる。  資産2億を引き継いだ24歳の青年の療養所金利生活を延々と表現する「魔の山」という小説世界とはなんなのか。  別に貴族小説というわけでもない、カストルプ青年は多少恵まれていたという書かれ方だろう。  かつてのヨーロッパの金満ぶりというのはすごいなって思う。

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