大江健三郎「河馬に噛まれる/『河馬の勇士』と愛らしいラベオ」という小説は、日本赤軍のリンチ殺人事件での高校生メンバーで便所掃除係りだった少年が、十何年後かに大江健三郎とちょっと文通をして、その後アフリカで暮らしているっていう話だった。

かつて少年だったコイツが、アフリカでカバに噛まれるんだよね。そして現地で「河馬の勇士」という称号をちょうだいしたらしい。だからといって、別に何か冒険が始まるというわけでもなく、彼はアフリカで車の整備なんかをしながら生計を立てるようになる。ぱっとしない人生といえばその通り。唯一つの勲章は、カバに噛まれたということだけ。

大江健三郎の知り合いの女の子が、「河馬の勇士」に会いに行って、大江健三郎の悪口を言う。それに対して「河馬の勇士」はこのように答える。

「大江は大江で自分のカバにかまれているのじゃないか?」

大江健三郎にとってのカバとは何か、というのははっきりとは書かれていないのだけれど、イーヨーのことだと思う。たいした人生ではないけれど、自分の勲章はイーヨーに噛まれたことだというわけだろう。

話の骨格はレインツリーあたりから一貫している。


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