時代小説だね。舞台は幕末らしい。酔いどれ小籐次(ことうじ)留書、というのはシリーズものらしく、「状箱騒動」は第19弾という。結構な人気シリーズらしい。  この本を読み終わって、驚くことばかりだった。文庫本のカバーの裏にあらすじみたいなのが短く書いてある。  そこにこうある、「無事に仲人を務めた小籐次は水戸に旅立った。だが、街道筋で状箱が盗まれたことを耳にする。その強奪は何を意味するのか......」  小籐次という主人公が、江戸から水戸に旅することで話が始まるのだろうと、普通思う。しかしこの主人公、なかなか旅に出ない。最初の20ページぐらいは、仲人の話だ。続き物だから前巻で何かあったのだろう。その後30ページ、旅に出る前の近所のあいさつ回りだ。まあまあ、もしかしたらあいさつ回りは必要かもしれない。その後20ページ、近所に住むボケ老人が行方不明になって、みんなで探すという話。この辺は必要なのかな。  70ページ以降、小籐次はやっと旅に出る。旅に出たのはいいのだけれど、30ページほど、どうでもいい旅の描写が続く。荒川の先は何橋だとか、水戸藩が用意してくれたかごに乗るだとか乗らないだとか。そして、100ページ以降にやっと水戸藩の状箱騒動なるものがでてくる。  その状箱騒動自体は170ページの分量だ。  ここまでで270ページ。  残り70ページある。どうするんだこれ? と思うよね。  小籐次は水戸の職人に竹細工を教える。そもそも小籐次は竹細工を教えに水戸藩に旅している。だから真剣に教えちゃう。アイツの竹細工はいいとか悪いとか、これで70ページ。   要するに、小説の半分がイントロダクションとエピローグなんだよね。おまけに、真ん中の状箱騒動の核心部分も、内容的には薄い。  かなりのレベルの「ゆっくり小説」だと思った。  世の中のジジババって、こんなゆっくりな小説を読んでいるんだ、と驚いた。   読みたいものを読みたい、という気持ちはわかるのだけれど、ここまで来るとひどいよ。歳をとっても、チャレンジというのはだいじだと思う。楽をしよう、楽な小説を読もう、そんなことを思ってはダメだ。