3巻目前半。  ドンキホーテ一行が泊まっている宿屋に、イスラム教徒らしき女性と連れの男性が泊めてくれとやってきた。奇妙な二人組みだから、みんな興味津々。懇願により、男の方が2人がここにいたるまでのことを話し始める。  話すのはいいのだけれど、この身の上話が文庫本換算で100ページだから。  内容自体はどうということもない。レパントの海戦でイスラムの捕虜になってしまった男が、キリスト者になりたいというイスラムの女の手助けで、共にスペインにまでやってきた、というもの。この話が、なぜ100ページにもなるのか。  たとえばスペインに上陸するあたりはこんな感じ。  「さまざまな意見が出され議論が重ねられましたが、最終的に採用されたのは、ゆっくりとすこしずつ岸に接近し、並が静かでそうすることが可能であったら、どこへなりと上陸しようというものでした。それを実行に移し、おそらく夜中の12時の少し前だったでしょう、われわれはいかにも不恰好な高い山のふもとに着きましたが、その山も波打ち際からすぐにそびえているわけではなく、楽に上陸できる空間をゆうに残すほどには奥まっていたのです」   近代小説を読みなれているものには、奇妙な文章ではある。焦点が一定していない。出来事の羅列の文章だ。これでダメだというわけではないのだけれど、この調子で100ページやられたら、読む者の心に余裕がないとちょっと読みきれないだろう。  「ドンキホーテ」とは何なのか?   この「ドンキホーテ」という小説は岩波文庫で全6巻なのだけれど、はじめの3巻が1605年にまず発表された。とりあえずこの3巻を読み終えれば、「ドンキホーテ」とは何なのか?、ということについて何かわかることもあるだろう。