「ドンキホーテ」という物語は、現代小説とは構造が異なる。  2巻目で、ドンキホーテはやらかしちゃって山に逃げ込んで、そこで隠者みたいな男に出会う。人知れず?山奥に住むこの男にドンキホーテは興味津々。頼み込んで身の上話を聞かせてもらうことになった。男は話す条件として、軽々しい質問等をして私の話の腰を折らないようにして欲しい、と頼む。  しかし案の定、ドンキホーテはつまらない突っ込みをいれてしまう。  男は怒って話を途中でやめてしまう。  貴族の女性との恋の破綻の物語らしいのだけれど、まだ全然破綻していないような、二人はまだラブラブみたいなところで話は途切れてしまう。 この100ページぐらい後で、ドンキホーテを迎えに、ドンキホーテの友達がこの山を訪ねる。この友達も隠者の男に会う。 今度は首尾よく、友達は隠者の身の上話を全て聞いたという。隠者の話とは結局、親友に裏切られて婚約者を盗られた話だった。  しかしこれ、主人公のドンキホーテは話の前半しか聴いてないままだ。話の全部を聴いたのは、チョイ役であるドンキホーテの知り合いと、それに読者だけだという。  主人公を持ち上げるために事象をエンディングに向けて集中させていく、という近代小説とは異なったあり方。  「ドンキホーテ」は拡散する物語だ。