都民ファーストの会が都議会選で大勝した。安倍政権が左にウイングを広げる中、安倍の右に出て自らの場所を確保したということだろう。  自民大敗の原因は安倍政権のスキャンダルだといわれているが、私はそうは思わない。そもそもの都議会自民党の体質が古すぎたということだろう。都議会のドンなる人物を中心に利益を引っ張ろうという、今どきそんな考え方は許されない。長い目で見れば、古い体質の自民都議会を切れたのは、安倍的政権にってはプラスだろう。  安倍は日本の総力体制を呼号しているが、日本が総力戦体制に移行するのは、歴史の必然だと思う。安倍総理の祖父に岸信介がいる。  岸信介は戦前、革新官僚として満州に入り、満州の「産業開発5ヵ年計画」を主導した。革新官僚というのは、当時の総力戦における先兵だ。その後、太平洋戦争開戦時の東條内閣で商工大臣となった。  普通に考えれば戦争責任を問われてしかるべきだろうと思う。ところが戦後総理大臣にまで上り詰めている。  これは結局どういうことなのか。   戦後のインタビューで、岸信介は自らの開戦責任について、「あの戦争に至る過程というのは、山から巨大な石が転げ落ちてきているようなもので、個人としての誰かが止められるというものではなかった」 と極めて率直に語っている。  総力戦を志向する日本の精神的な力みたいなものが、明治維新を引き起こし、太平洋戦争に引きずり込んだ。いま総力戦の歯車が三度回り始めようとしている。  この世界にはどうしようもないことというのがあると思う。  自由意志なるもので世界がコントロールできるなんていうのは、夢見るもののおとぎばなしのレベルだ。