評価すべき点は、驚くほど読みやすいということ。内容というのはたいしてない。主人公のサラリーマンが、小樽でロシア人のチンピラと知り合って、稚内にいるそのチンピラの彼女へに伝言を頼まれて、稚内でその彼女に会うと、彼女はすぐロシアマフィアにさらわれて、ロシア人のチンピラと主人公で彼女を助けるみたいな、ただそれだけ。それで文庫本で400ページだから。 主人公が、小樽から稚内まで行くのに高速バスに乗るのだけれど、ここの行程の描写が長い。50ページくらいあったのではないか。高速バスはどこから乗るかとか、ガイドかどんなアナウンスをしたとか、休憩所で主人公が何を買っただとか、どんな弁当が出たかとか、畑に草を丸めた巨大な円柱形のものがあったとか、家が少ないとか、雪が白いとか、話の筋に関係ない旅情描写が50ページだから。主人公って、稚内に大事な用事があって行くんだよね? 主人公が稚内に着いたら、まだ時間があるからといって、タクシーで宗谷岬に行ってしまう。いやー、海が凍っていますっていう。稚内に戻ってきて、まだ時間があるからって夕食だよ。東京に比べて安いカニを食べてみたとか。   お前もう観光に来てるだろう。   本格ハードボイルドなら、主人公はギリギリの時間に稚内に到着すればいいわけで、この本は、ハードボイルド風の観光案内本というスタンスなのだろう。大沢在昌の本をはじめて読んだのだけれど、観光取材というのを頑張っているなという印象だ。 私は北海道に暮らしていたこともあったから、ちょっと懐かしくなったりした。大沢在昌は旅行記のエッセイとか書いたらいいではないだろうか。文章は簡潔だし、取材熱心だし。ただ小説家としては、ちょっと線が細いかなという気がする。  まあ、この本しか読んでいないのだけれど。