卯時(ぼうじ)の酒とは朝から飲む酒の事。  
 
白楽天は74歳まで生きたのだけれど、50歳をこえてくると、もう老後みたいになっちゃって、全く自然な感じで詩を書いている。花がどうとか、池がどうとか、酒がどうとか。 

「長恨歌」や「琵琶行」みたいな、リリシズム溢れる物語詩は書く気ぜんぜんありませんみたいな感じだ。  

普通ならイライラするところなんだけれども、白楽天の人徳なのだろう、白翁ならしょうがない感じになってくる。  
白楽天の「卯時(ぼうじ)の酒」という詩を見てみよう。そもそも朝から酒を飲むなんてろくでもない。アル中のダメ人間としか考えられない。  

未だしかず卯時の酒  
神速にして効力倍する  
一杯、掌上に置き  
三嚥して腹内に入る  
温かなること春の腸を貫くがごとく  
暖かなること日の背を炙るがごとし   

朝から飲む酒はダメ癖なのはわかっているのだけれど、敢えて強弁しているという感じだね。さらにこうある。   

行け、魚は泉に帰る  
超然として蝉は抜殻を離る  
是非、分別する事なかれ  
行止(こうし)、疑義することなかれ   

開き直っちゃっているんだよね。琵琶行を書いてあげたのだから、50過ぎたら朝酒飲んじゃってもいいじゃん、みたいな感じなんだよね。ここまで言われたら、ファンとしてはしょうがないみたいになるよ。  

白楽天って、本当に憎めない人なんだ。こういう幸せな人もめずらしい。

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