「上陽白髪の人」という詩は、宮廷の大奥みたいなところに15歳で入った少女が、いろいろあって皇帝と会うこともなく50年たってしまったという話。  抜粋しながら見てみる。前もって言っておくと、この詩はすばらしい出来なんだよね。こういうとなんなのだけれど、普通、古典が面白いなんてない。小説で言えば、森鴎外は?夏目漱石は?モーパッサンは?ゾラは?トルストイは? 読んでみた人はわかると思うけれど、これらの巨匠を読むためには、ある一定以上の我慢強さが必要だ。白楽天は近代の巨匠なるものより一枚上手だ。   

入りし時は十六 今は六十  
同時に採択す 百余人   

大奥で50年たった言ったけれど、正確には44年だね。   44年前、15歳の少女はどのような美貌だったのか。   

皆言う 内に入ればすなわち恩を受くと   
顔は芙蓉に似て 胸は玉に似たり   

繰り返して言うと、「胸は玉に似たり」だから。まあなんと言うか、たまらんね。  さらに、「胸は玉に似たり」と自分で言っちゃっているところが個人的にはプラスポイントだ。   
そんな少女がなぜ皇帝の顔も見れなかったのか。  

いまだ君の面を見るを得るをいれざるに 
すでに楊貴の遥かに側目(そくもく)せらる  

楊貴妃の女らしい警戒心でにらまれちゃったんだよね。  

妬みてひそかに上陽宮に配せしめ   
一生 ついに空房に宿る   

白楽天はここから畳み掛けてくる。   

秋の夜は長し  
夜長くして寐ぬる無く天明ならず  
こうこうたる殘燈 壁に背く影  
蕭蕭たる暗雨 窓を打つ声   

まあこんな感じで長い年月がたってしまったという。  
そして最後、   

青黛 眉を点ず 眉細くして長し  
外人は見ず 見ればまさに笑ふべし   
天宝の末年 時世の粧(よそお)い   

要するに、今の人から見れば、私の眉の描き方なんて流行おくれになっているだろうと、あっさりした感じで嘆くわけだ。   

これほど強力に凝縮された物語世界というのも、そうそう考えにくいだろう。


関連記事/李煜(りいく)浪淘沙(ろうとうさ)
     
      
       
      
                   



関連記事/ 
底辺会社の現実1 底辺会社の現実2 底辺会社の現実3 底辺会社の現実4
底辺会社の現実5 底辺会社の現実6 底辺会社の現実7.......底辺会社の現実ラスト


かに!カニ!蟹!<美味いカニの専門店> カニの浜海道