明治以降から戦前の昭和にかけての日本は、社会保障というものがほとんどない社会だった。近代日本とは、江戸時代の身分による住み分け体制から戦中戦後の総力戦国家にいたる過渡期みたいなものだったと思う。これは恐ろしい話でね、自由を過度に信じて田舎から東京に出てきた人たちの多くは、全く劣悪な環境で働かざるをえないということになる。 劣悪な環境とはどのようなものか。 例えば明治中期の3大スラムの一つ四谷鮫河橋スラムは陸軍士官学校の残飯によって成立していたという。 残飯によって成立するスラムとそこに暮らす日本人というのなら、まあだいたい想像がつく。冷蔵設備やスーパーやコンビニのない時代だし、昭和30年ぐらいまで、日本は欧米に比べて極端に生産性が低い国柄だったし。 現代日本も威張れたものではない。夜のスーパーで5割引の弁当を選んでいる40過ぎのオヤジたちは、スラム的哀愁を漂わせている。 これをトータルで考えるとどうなるなるのか。 都会にあこがれて、一人東京にでてくるのはナンセンスということになる。家族、一族の枠組みを堅く守って、それぞれの自己を少しづつ殺しながら自分の居場所を確保するというのが賢い選択ということになるだろう。 私もそのことに今さらながら気がついた。自分は、岡山の田舎を後にして東京に来て、20年以上経つだろう。結婚して子供が4人いるのだけれど、たいした生活もしていない。首をめぐらせて周りをよくよく見てみれば、これはスラムだよな。流民だよ流民。個人的にやりたいことをやりすぎちゃったんだとは思う。
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