ヒトラーの「世界に冠たるアーリア人」なる概念が意味不明で、ここがヒトラーの突っ込まれるところではあると思う。ヒトラーは悪人だろうから、その論理の最も弱い環を拡大して貶めようという考え方はありえる。ヒトラーの悪口を言っておけば安全だということだろう。  馬鹿が。  私はこのような思考法は選択しない。   「わが闘争」を読む限り、アーリア人というのはユダヤ人のアンチテーゼだね。ユダヤ人が世界を征服しようとしているというヒトラーの考えは、行き過ぎだとは思うけれど全く根拠のないことではない。ユダヤ陰謀論なんていうものでもない。そもそも西洋文明にはユダヤ教というものが明確に刻印されている。キリスト教の聖典である聖書は、新約聖書と旧約聖書からなっていて、旧約聖書はユダヤ教の聖典だろう。新約と旧約を貼りあわせて「聖書」とかいうのは、キリスト教に関係ない人間から見れば、そんな不徹底なことでよくやっていけるよなとは思う。もう一つ、プラトンのイデア論というのは西洋近代哲学の根底を貫いている。プラトン自身はイデア論のアイデアをユダヤ教から借りてきたというのは、よく言われることなんだよね。近代西洋を現今のように持ち上げた力の大きい部分がユダヤというのは、間違いないところだろう。ベルサイユ体制下での苦境にあえぐドイツにおいては、何らかの実体としての概念が必要だったのだろう。それがヒトラーにとっては、ユダヤ人のアンチテーゼとしてのアーリア人だった。だから、アーリア人が優秀であるという既存の根拠はない。それはこれからの戦争に勝つことで証明されるだろうことになるだろう。    日本人の立場からすれば、独ソ戦とか必要ない。ソビエト連邦なんて共産主義のはみ出し国家なんてほっておけばいいと普通、思う。ところがドイツには、アーリア人なるものの優秀性を証明しなくてはならない特別の事情があったという。ヒトラー自身の思想というのはすばらしい。ヒトラーは何年かにわたる世界大戦の過酷な従軍によって思想の天啓を受けた。過酷な戦争状態によって進化したヒトラーは、戦争状態を加速するよってドイツを試そうとしたのだろう。