昔、筒井康隆が作家協会を脱退した時、中上健治と柄谷コウジンと一緒だったんだけど、あれってたまたま3人が坂口安吾の記念講演で一緒になったときに、話がまとまったということがあった。

今から考えると、坂口安吾と筒井康隆ってつながるものがある。坂口安吾は評論はすばらしいのだけれど、小説はその力を生かしきれなかったというところがあると思う。

「不連続殺人事件」なんて、あれを推理小説の枠組みを使わないで書けたなら、もっとよかったと思うのだけれど、個人の力が足りなかったというのはしょうがない。個人が評論も小説も何でも出来るとは限らないから。

筒井康隆は坂口安吾の足りないところを突き詰めたということはあるんじゃないだろうか。   

読書って、山登りとかマラソンとかと似たような感じがあって、なんだか駆り立てられてやるなんていうのがあると思う。
楽して暇を潰すなら、映画を見たり、ゲームやったりで十分だ。あえて歩いたり走ったり、目で文字を追ったりとか正直疲れる。

人前で本を読むなんてかっこつけているだけだ、なんていう言説も広い意味では正しいだろう。

今日本屋に言ったら、筒井康隆の「虚構船団」があって買っちゃった。懐かしい。虚構船団はもう25年ぐらい前の発表作だろう。私が二十歳のころ読んだ。中学生のころ、筒井康隆が好きで、東海道戦争とか笑うなとか読んでいた。ただし、30年前に読んだ小説をもう一度年末年始にゆっくり読むというのは、もう駆り立てられる世界からすこしずれているところにあるだろうとは思う。


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