日本がなぜ今このようにあるのかを考える。  日本の人口動態というのは、江戸時代中期に停滞して江戸時代後期に入りじょじょに増え、明治以降爆発的に増えるという状態になっている。明治維新以降、西洋文明が輸入されて日本が文明化されたとするなら、明治に入って日本の人口が増え始めるはずだ。普通に考えれば、明治維新は、原因ではなく結果だろう。明治維新的な何ものかが、江戸末期に至る100年ほどの間に少しずつ積み重なってきたということだと思う。  では何が積み重なってきたのか。  これは全く微妙な話で、学者先生などにはあまりに危険で簡単には断言できない事象だと思う。単なる歴史好事家の私があえて断言するなら、江戸末期の明治維新への助走には、朱子学の民衆への広がりというのがある。全ての人間に生きる価値があるという、朱子学の一君万民思想の正義の思想が、少しずつ日本人の社会観を傾けたのだと思う。  人口増加と一君万民思想は関係がないように思うかもしれないが、分かりやすい例を一つあげてみる。  近代までの日本では、子供の間引きというの当たり前だった。必要のない赤ちゃんとか、出来の悪い子供とかは間引きしてしまうわけだ。しかしそこに全ての人間が生きる価値があるなんて思想がはいりこんだとしたらどうだろうか。間引きされる子供の数は減り、人口は増えてくるだろう。  江戸中期以降、その観念世界を徐々に傾けてきた日本人が、明治維新を経て、日清日露を経て太平洋戦争にいたるという、日本の近代の歴史は、西洋文明ではなく、根本は朱子学を基点に傾いた世界を登るような歴史だったと思う。