坂口安吾「デカダン文学論」は昭和21年」発表。

この中で坂口安吾は、
夏目漱石の「心」と「門」を評してこのように書いている。

「人間本来の欲求などは始めから彼の文学の問題ではなかった。彼の作中人物は学生時代のつまらぬことに自責して、二三十年後になって自殺する。奇想天外なことをやる。悩んで禅の門を叩く。別に悟りらしいものはないので、そんなら仕方がないと諦める。物それ自体の実質に就いて、ギリギリのところまで突き止めはせず、宗教の方へでかけて、そっちに悟りがないというので、物それ自体の方も諦めるのである。こういう馬鹿げたことが悩む人間の誠実な態度だと考えて疑ることがないのである」

私はいくつかの夏目漱石論を読んだけれども、この坂口安吾の夏目漱石論ほど現代的であると思ったものはない。言っていることが全くの正論に聞こえて、さらに「奇想天外なことをやる」とか「こういう馬鹿げたことが」なんていう言葉遣いが私の心を引き付ける。坂口安吾がこれを書いたのが昭和21年だという。
現代よりも現代的な昭和21年の坂口安吾。そして何度でもよみがえる夏目漱石。

すばらしい。

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