「悪霊」を最初に読んだのは、高校1年くらいだったと思います。主人公のスタブローギンがクールで力強くてかっこいいと思った記憶があります。

でも20何年たって読み返してみると、スタブローギンとの対極にあるような登場人物たちに、ドストエフスキーの愛を感じるんだよね。
まずシャートフ。
シャートフは、まじめで一途で義理堅いという設定のロシア人の典型です。このシャートフのところに何年も前に付き合っていた女が、腹ぼてになって帰ってくるのです。シャートフは大喜びです。大好きだった女が帰ってきてくれた、それも子供をおなかに抱えて。誰の子供かなんていう野暮なことをシャートフは尋ねたりなんかしません。もううれしくてうれしくて、冬の真夜中に産婆の家に向かって走り出していきます。産婆を無理やりたたき起こして、自分の部屋に引っ張ってくるのです。
最後、シャートフはスタブローギンの取り巻きに殺されてしまいますが、「近代に殺される愛すべきロシア」を象徴する人物として、きわめて生き生きとドストエフスキーによって描かれています。

レヴャートキン大尉
大尉ということになってますが、むかし大尉だったらしいというだけで、正確に言えば元大尉です。コイツがとんでもないクズです。飲兵衛で乱暴者で、強いものには卑屈で、頭の弱い妹と住んでいるのですが、この妹をいじめるのです。このかわいそうな妹はレヴャートキン大尉を兄ではなく召使だと思っていて、その事でさらにいじめられるのです。
このレヴャートキン大尉が、「何で?」と聞かれてぶち切れるのです。私たちの周りにもいますよね、すぐ、「何で?」と聞いてくる人が。少しは自分で考えてみればいいのに、と私なんかはちょっとイラッとしたりします。レヴャートキン大尉はぶち切れてこういいます。
「何で?だと。この世界の生きとし生けるあらゆるものが、神様にたいし何で?と尋ねている。
何で私は生まれてきたの
何で私はここに生きているの
何で私は生まれて死んでいくの

これに対し神様は一度たりとも答えたことはない、無数の何で?に対して一度たりともだ。神様でさえ答えた事のない質問に、このレヴャートキンさまは答えなくてはいけないのか!!!」

レヴャートキン最高。ドストエフスキーはこんな取っておきのセリフをこんなクズに割り振るんだからズルイ。

ドストエフスキーは世界文学時史上最高の作家であることは間違いないです。

関連記事