6巻に入って、マルクス、本気出してきたのではないでしょうか。

資本主義下において、何故資本は利益をだすのかという問題があります。普通に考えると会社を回して利益が出るというのは当たり前の話で、不思議でもなんでもない。敢えて言えば利益は資本からにじみ出てくるもの、というのが普通の考えだと思います。でもこれは個別資本の話であって、閉じられた空間、まあ例えば一つの国の中での総資本について考えた場合、簡単に同じ事が言えるのかという問題があります。

マルクスは総資本について考えるために
支出資本+労働賃金+不払い労働(剰余価値)=商品総額
という前提を置きます。

すなわち資本家にとって利益というのは資本から滲み出してくるものではなく、労働者が行った労働に対して、ある割合を不払いにした結果だというのです。

資本家はこの不払い労働分を一定の割合で支出資本に組み込む事によって、資本主義は巨大化するわけです。
支出資本+労働賃金+不払い労働(剰余価値)=商品総額
という公式はうまく出来ているのです。
例えば、支出資本がどんどん大きくなったとします。すると不払い労働がどんどん増えて資本家はすごく儲かるような感じがします。しかしそうは行かないのです。支出資本が増えるということは、いい機械を工場に導入するということです。いい機械を導入すると労働賃金を節約する事ができます。最初は儲かるでしょうが、そのうち他のライバル工場もその機械を導入するようになると、支出資本+労働賃金と不払い労働(剰余価値)の比率がかつてより資本家にとって不利な比率で安定するようになります。
すなわち支出資本が増加すると利益率が低下するのです。
先進国の成長率が低くて発展途上国の成長率が高いのは、発展途上国の国民が頑張っているというのではなくて、先進国の方が支出資本が大きいから、すなわち金持ちだからということになるわけです。

支出資本+労働賃金+不払い労働(剰余価値)=商品総額
は当たり前のことが当たり前に説明できる素晴らしい公式なのです。マルクスはこの公式を様々に利用していろいろな経済現象を説明しようとしています。

しかしマルクスは天才肌なんでしょう。この公式と関係ないことを説明したりもしています。例えば、「資本論」 岩波文庫6巻277ページ
「生産物の商品への発展は諸共同体間の交換によって生ずるのであって、同一の共同体間の交換によって生ずるのではない」
とありますが、このようなことは公式によって自然と理解できる範囲を超えていて、マルクスの思いつきなのではないかと疑うレベルで、検証が必要だと思います。

マルクスの論理のヒエラルキーを大事にしながら、7巻以降も読んでいこうと思います。


資本論
絶対的剰余価値の生産            
相対的剰余価値の生産
資本の蓄積過程
本源的蓄積
岩波文庫 第四巻
岩波文庫 第五巻
岩波文庫 第六巻
岩波文庫 第七巻
岩波文庫 第八巻
まとめ
廣松 渉 「マルクス主義の地平」


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