資本論 3 岩波文庫 / カルル・ハインリヒ・マルクス 【文庫】
資本論 3 岩波文庫 / カルル・ハインリヒ・マルクス 【文庫】

19世紀後半のイギリスでは資本は巨大化して、労働者の多くは生命維持ギリギリの状況に追い込まれます。
資本は大きければそれだけ有利なので、資本の寡占化が進みます。巨大資本と烏合の衆である労働者では力関係が一方に傾いてしまったのです。

マルクスはイギリスよりさらに資本家の天国であるところのベルギーの現状を報告しています。
ベルギーは人口465万人。そのうち選挙権を得られるほどの上流階級9万戸45万人、中産階級人口195万人、労働者階級家族225万人。
この労働者階級家族225万人平均の食費に回せる賃金では、ベルギーにおける囚人に与えられているカロリーも賄えないという。

このことは国が資本の蓄積過程を歩む場合によくあることなのです。河上肇は「貧乏物語」の中で大正時代の日本の労働者階層がどれほどの貧困の中で生活しているのかを描いています。

このことは文明に暮らす同じ人間として許されることなのでしょうか。この事が許されるとするならば、文明そのものを否定する場面に立ち至る事になるでしょう。彼らはどのようにすれば救われるのでしょうか?

第一次大戦以降、列強同士の戦いというのは総力戦となるのが常識となります。総力戦となれば労働者階級こそが貴重なる国家の尖兵となります。戦争が眼前に見える中、貴重なる国民層が自らの肉体すら維持できないであろう栄養状態では、もうこれは国家の滅亡です。
すなわち戦争状態は労働者階級の地位上昇を示現するのです。
軍部や革新官僚、彼らを押し上げた国民層において、戦争状態は自らにとって有利なのです。戦争を煽れば煽るほど彼らの社会的階層は上昇します。そして煽った結果が太平洋戦争です。当時の多くの国民にとって大事だったのは、戦争に勝つ事ではなく、戦争状態を維持することだったのでしょう。

日本は戦争には負けましたが、戦後も総動員体制は継続します。戦時国家から福祉国家へ。名前は変わりましたが、実質的には同じものだと思います。
現代日本国民の一般庶民のある程度の生活レベルというのは、昭和10年代に始まる総動員体制のある種の実りだと思うのです。現状の庶民の生活レベルはかつて戦争で死んでいった人たちを梃子に成し遂げられたものであり、本当に大事にしなければいけないものだと思います。
自己責任論などと、国民自らの根幹を掘り崩すようなことは私は感心しないですね。現代において戦争というものはもうプロの仕事であり、私達が福祉国家を手放せば、昭和初期とは異なりもう再びそれを取り戻す手段はないのです。


資本論
絶対的剰余価値の生産            
相対的剰余価値の生産
資本の蓄積過程
本源的蓄積
岩波文庫 第四巻
岩波文庫 第五巻
岩波文庫 第六巻
岩波文庫 第七巻
岩波文庫 第八巻
まとめ
廣松 渉 「マルクス主義の地平」


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