帝国とナショナリズム 岩波現代文庫 / 山内昌之 【文庫】【中古】 帝国とナショナリズム 岩波現代文庫 学術262/山内昌之【著】 【中古】afb



「帝国とナショナリズム」という本は、近代以降の世界の歴史をトータルに考える事により現代以降を知的に考えていこうという、かなりアグレッシブな感じです。



現在日本語を喋って日本の領土に住んでいるほとんどの人は、自分は日本人だと思っているでしょう。「日本」という言葉も奈良時代からあるそうですよ。だからといって日本人が奈良時代から日本人意識を持っていたかというと、かなり疑問ですよね。

板垣退助は戊辰戦争で東北で戦っていた時に、東北の武士が自分の藩を守ろうと必死で戦っているのに地元の農民は藩と自分は関係ありませんという態度で日常生活を営んでいたという現実を見て将来の日本について心配をするのです。政府と民衆が隔絶していれば、国というものは維持できないのではないか。東北諸藩のように日本も滅びてしまうのではないか。板垣退助はそのように考えて、自由民権運動を始めたそうです。

明治初期において、西洋の圧迫に対して日本という国の独立を維持していかなければならないと自覚的に考えたのは旧武士階級までだったでしょう。すなわち明治初期において日本国民とは旧武士階級のみなわけです。板垣退助や福沢諭吉の言動というは日本国民の枠組みを拡大しようと必死の戦略的努力です。明治20年、徳富蘇峰が「国民の友」を創刊した時には日本国民の範囲が豪農層まで広がっていたと思われます。そして今の言葉でいう庶民が日本国民という枠組みに参加した契機というのが日露戦争という事になるのでしょう。

こう考えると、日本人が日本人の枠組みを獲得したのは結構最近なんですよね。現代から見れば、日露戦争以前にも日本的一体感みたいなものがあったかのように思ってしまうのですが、それは共同幻想の部分が大きいという事でしょう。

現代は世界的な時間が相対的にゆっくり流れていますが、20世紀初期の日本というのは、時間の流れが激流です。さすがの日本も、少しの判断ミスで太平洋戦争みたいな罠にはまるという事もありえるだろうなと思います。明治国家が失敗であったというのは厳しい考えではないでしょうか。確かに最後はあのような結末にはなりました。しかしあの短い時間で、日本をここまで引き上げたのは明治人の苦闘の結果であったと思います。