三島由紀夫の豊饒の海は輪廻転生の話でした。

インドには、かつてインダス文明というものがあったのですが、アーリア民族がアフガニスタン方面からインドに侵攻し、インダス文明と戦い、それに勝ちます。その戦いの様子などが「リグベーダ」に書かれているのですが、その「リグベーダ」にすでに輪廻転生の原型のような思想があるらしいのです。

輪廻転生というのは、まあ、死んでもまた別の生き物に生まれ変わるという思想ですが、これは驚くべき革新的な思想です。輪廻転生というものが存在するとするなら、親と子、祖先やしきたり、などという日本にも根強い、伝統的部族的価値観なんていうものは、二次的な価値観になってしまうからです。本当の自分なんてものは、自分の子供や祖先の中にあるのではなく、未来や過去のまったく別の人格の中にあることになります。人間というものは祖先や部族に縛られるものではなく、その個、個体、個人、独立してその世界に屹立するわけです。

山本七平のエッセイに、なんだかサラッと書かれてたことなんですけど、アフガニスタン地方に住んでいたアーリア人は輪廻転生の思想をもって、インドにも侵入したけれど、西方すなわち古代ギリシャにも侵入した。輪廻転生の抱える個の独立という精神は、ギリシャからローマへ、ローマから中世ヨーロッパ国家へ、中世ヨーロッパ国家から近代国家へと受け継がれた。

いやこれ、山本七平が書いてたことですから、それもサラッと。

でも壮大な話ですよね。何千年もの昔、西に向かったアーリア人の思想の結果である資本主義の中にくらす、極東の民の日本人が、その資本主義に倦んで思い出す過去の中に、東に向かったアーリア人の思想である輪廻転生がまた存在するというのですから。


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