世界はなぜこのようにあるのか、とたずねても普通誰も答えてはくれない。これがミステリーだと名探偵が世界の整合性を説明し、犯人が整合性の根拠となる告白を行う。しかし残念ながら実際の現実世界はミステリー小説ではなく、名探偵も登場しなければ犯人の告白も存在しない。では世界説明というのは不可能なのかというと、じつはこれそうでもない。世界は強固な一体性を持って眼前に厳然と存在すると考えてしまうと手がかり足がかりはなくなってしまうのだけれど、世界は変化していて、その変化の境目にくさびを打ち込むことができると考えるならば、世界説明はある程度可能となる。

中世、近世、近代と歴史は区分けされたりしているのだけれど、それぞれ何が違うのかというと、柄谷行人は物の交換様式が異なると言う。物と物とを交換するような、例えばお中元のやり取りをするような世界はウェットな中世世界なのだけれど、物と金を交換するような世界はドライな近代世界というような。

このような交換様式にそくして世界を理解したとして、一体何が分かるのか。

資本主義とは、農村などの共同体を徐々に解体することによって、共同体構成員を労働し消費する労働者に移行させる力を持つという。 国家は資本に依存し、資本は労働者の消費に依存し、労働者は失われた共同体への郷愁を国家に求める。互いが依存し互いに強化しあうシステム。
柄谷行人は交換様式の変化の歴史を手がかりに、資本主義を以上のように説明している。
この理論を使って現在の安倍政権について考えてみたい。
安倍政権は度重なるスキャンダルにもかかわらず高い支持率を維持している。年代別内訳を見てみると、40代以下男性の支持率が高い。 
なぜか。
資本主義は共同体を解体する。戦後、田舎から都会に「金の卵」と称しての集団就職というものがあった。これも日本の農村共同体解体のひとつの例だろう。資本主義は地域の共同体を解体し続け、ついに現代日本において最後の共同体「家族」を解体し始めた。女性の解放である。女性は家族に対する無条件の献身を拒否するようになった。女性は男性を選ぶようになり、結婚できない男性が増加した。2015年現在、男性の生涯未婚率は23%、将来的には30%ほどになるのではないかと予測されている。歳をとり親が死に妻も子供もいない老後というのは、想像するに極めてきついものがあるのではないだろうか。何らかの共同体に参加すればいいと考える人もいるかもしれないが、女性に相手にされない下位30%の男が気軽に参加できる共同体もそう多くないだろう。
多くの未婚男性は、日本近代史上かつてないほどに共同体からの阻害圧力にさらされている。。「労働者は失われた共同体への郷愁を国家に求める」とするなら、40代以下の男性の多くが強権的な安倍政権を支持し続けるのも理解しやすいだろう。
安倍政権の高支持率がこのような巨大システムの中でのひとつの結果であるとするなら、アンチ安倍の人たちはよく考えなくてはならないだろう。

このように全体の構造を理解しようとする努力は、何らかの意味を生む可能性があります。