幸徳秋水の「帝国主義」を読んでみましたが、論理は明快です。これを1901年に書いたとなるとたいしたものですね。

帝国主義を愛国主義と軍国主義の混合物であるという前提から出発して、愛国主義を否定し、軍国主義を否定し、さらにその混合物である帝国主義を否定するという展開になっています。結論として、帝国主義の対極にある社会民主主義を推奨するということになります。

現代の視点から見れば、当たり前のことを論理的に積み上げているということになります。

「えっ、ちょっと待って」

という人もいるでしょう。愛国心を否定して社会民主主義を肯定するなんて、ということになりますか。しかし、太平洋戦争前においては、社会保障なるものはほとんど存在しないのです。年金もない、失業保険もない、健康保険もない、そんな世界なのです。ある程度のセーフティーネットの存在する現代日本で、そのセーフティーネットを享受しながら、それを勝ち取らしめた社会民主主義を否定するというのは、あまり賢い事ではないでしょう。

私が頭にくるのは、これだけのものを書いた人間を明治政府は1911年大逆事件をでっち上げ、幸徳秋水を絞首刑にしたことです。天皇なるものがどれだけ価値のあるものかは知らないけれども、幸徳秋水を処刑するなんていうことが許されていいわけはない。この「廿世紀之怪物帝国主義」を読んだ日本人は、だれもが思うことだと信じます。明治末における政府というのは、どこかに病んだところがあったということでしょう。