天皇制度というのは、もう千何百年も続いています。これは間違いなく日本の伝統です。「天皇」という言葉が現れたのが7世紀ですから、厳密な天皇制度は1400年続いているという事になります。これが天皇的制度となるともう何百年か遡ることになるでしょう。

しかし、この日本古来の天皇制度というものが存在し続けているとしても、明治維新以降、明治政府によって天皇制度には何らかの付加価値みたいなものが追加されてきたと思うのです。時代の要請としてしょうがない面もあるでしょう。19世紀末は日本が強固な独立国にならないと、西洋に侵略されてしまいかねない状況でした。当時のヨーロッパの戦略は「弱いところを削る」みたいなことでしたから。

明治政府が崩壊して70年です。1400年以上も続いている天皇制度を日本の伝統として大事にするというのは私も賛成です。しかし、明治政府が付加した偽天皇制度というのは、もう必要ないのではないでしょうか。現在のところどこかの文明に日本が侵略されるという心配もないですし、偽天皇制度なるものまで使って、日本の中に一体感を醸し出す必要はないでしょう。

ここで問題なのは、何が本来の天皇制で何が後で付け加えられた天皇制なのか分からなくなっているということなのです。

その事を知るためには、明治以前の日本の国の形とはどのようなものだったかというのを知る必要があります。根本を知る事によって、伝統的天皇制を知る事が出来るわけです。

ここにおいて網野善彦は驚くべき主張をします。

ざっくり言ってしまえば、日本というのは歴史的に東日本と西日本の連合国家だというのです。ここで言う東日本と西日本の境目はフォッサマグナの少し西、例えば尾張は西、三河は東です。
東日本というのは家父長的で父親の権威が強いです。西日本は母系社会で女性が強いのです。
東日本は被差別部落が少なく、西日本は多いのです。
いろいろな差異あるらしいですよ。
そして、西日本における権威は天皇で、東日本の権威は幕府なのです。

これは参りましたね。ある種の人々に網野善彦の評判がよくないわけです。
いいですか、この網野理論を突き詰めていけば、天皇というのは西日本のマッタリとした世界に浮かぶ権威であって、東日本は遠慮してもらえるかな? 東日本の家父長制度、父親が偉いなんていう制度は天皇制度とは何の関係もないから、東日本の人が家父長制度を維持したいと思うのなら、それは個人の能力でやっちゃってください、みたいなことになります。

私は西日本に生まれましたから、この感じ、分かるような気がします。ただ西日本にもマッチョなやつはいますから、統計的に断言できるわけではないですが。家族国家観みたいなものを天皇制度がフォローしてくれると思ったら間違いで、伝統的天皇制と明治国家的天皇制は区別していかなくてはいけないと思います。


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