母親は仕事の忙しい人で、私と妹は子守のおばあちゃんみたいな人に、週末の土日預けられる生活をしていました。私と妹はそれぞれ預けられる先が異なっていて、妹は「バーバン」なる60代であろう女性の所に連れて行かれていました。

当時私の母親は、土曜日に小学校が昼で終わると、私と妹を車に乗せてそれぞれの子守のおばあちゃんの所に連れて行くのです。妹は週末にバーバンと一緒にいられることをすごく喜んでいるようでした。私にもよくバーバンのことを話してくれていました、うれしそうに。

すべては子供のころの思い出です。

今から20年前に父親が、15年前に母親が死にました。母親が死んだ時、妹は25歳くらいだったでしょう。実家に私一人で母親の死骸の傍にいたときに、妹が横浜から駆けつけてきて、死んだ母親を前にして涙をポロポロと流すのです。

ちょっと意外な感じがして。けっしてひどい母親だったわけではないですよ。ただ仕事が忙しい人で、家事はお手伝いさんを雇う、週末に子供は子守のおばあちゃんにマル投げという母親でしたから。母と娘の間の愛情が薄いということもあり得るかと思いまして。

葬式が終わった後、兄と妹二人きりになったときに、妹が私にこういうのです、

「お兄ちゃん、私が子供のころに預けられてたバーバンってさー、おじいちゃんのお妾さんだって知ってた? お母さんが私をバーバンに預ける時は、親戚中反対だったらしいよ。死んだおじいちゃんのお妾さんなんて、かかわりになりたいものじゃなんいじゃん。
お母さんは自分では十分な愛情を子供に与える事ができないと思って、私をバーバンの所に預けたのでしょう。娘に愛情を与えてくれそうな人が目の前にいた。結局そういうことだと思うの。

でも私はバーバンが大好きだった。

私はお母さんにありがとうって言いたいよ。バーバンの所に連れてきてくれてありがとうって言いたいよ」

いろんな愛があるのだなと思って。

おじいちゃんの愛、バーバンの愛、母親の愛、妹の愛。全ての愛がつながるという事があり得るという。


関連記事/お名前.com
死んだ父親について
死んだ母親について
死んだクラスメートについて
結婚した妹について