もう30年も昔の事です。中学生のころに安部公房の「砂の女」を読んで、えらく感動したのです。

「砂の女」のあらすじというのは、
砂丘近くの村で主人公の男が村人に拉致されるのです。そして砂丘と村の境目にある竪穴に監禁されて、砂を掻き出す仕事を強制されるのです。誰でもそんな奴隷みたいなことはいやですよね。ところが、まあそこで生活しろということでしょう、女を一人あてがわれるのです。それが砂の女。奴隷的境遇の男は、だんだんと狭い空間での女との生活に満足するようになるのです。で、最後は逃げられるチャンスがあったのに逃げなかったという話。

今から考えると、私は中学のころまで人間恐怖症みたいな感じで友達も少なく、女の子なんかとはほとんど喋れないような感じでした。今の言葉で言えばアスペですね。他人が何を考えているのか分からなくて、人との距離感がつかめないのです。とくに突然の悪意などに弱かったです。その後、陰性アスペは克服しました。他人はたいしたことを考えていいるわけではないということを悟りまして。相手の態度で機械的に自分の態度を決めることにしました。相手が高圧的だと自分も高圧的に、相手が謙虚だと自分も謙虚に。どうせ他人はたいしたことを考えてないのですから、この程度で十分なのです。でも気をつけてください。これをやるとチンピラみたいなやつとは睨み合いになります。でもどうせ相手の心は空っぽなのですから、何も怖くはないですが。

砂の女を読んで、女の子と喋った事もなかった私は、好きな女と狭い空間で寄添って生きるということに憧れました。
大学に入って私には彼女が出来たのです。私が行ったのは国立の上位校でしたし、体育会でバレーボールをやっていました。アスペと知らず近寄ってくる女性もないわけではないのです。こういうのは大事にしないといけない。基本的に女の子にはもてる気がしない上に、「砂の女」に憧れているわけですから。

で、そのまま出来ちゃった結婚です。

20年経って妻に言われるのは、
「アンタには騙された」
ということです。
でもこれ私には私の都合があったのと同様に、妻には妻の都合があったのではないでしょうか。妻の都合がどんなものであったかは知らないですよ。知りたくもないし知る必要もないです。
私、子供がすきなのです。砂の女と妻には感謝しています。
特に砂の女に。

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