内村鑑三の「代表的日本人」は明治27年発表です。
明治期の文語というのは、漢文調で読みにくかったりするのですが、この本は英語でかかれたものを日本語に訳したものなので非常に読みやすいです。

この本の内容というのは、5人の日本人(西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮) を紹介したものです。内村鑑三が日本人のすごい人たちの紹介を英語で書いて世界に発信したというわけです。日露戦争で日本が勝ったときには、ヨーロッパの日本に対する興味というのが高まって、この本かなり売れたそうですよ。

この本のリアルな内容というのは、まあ、あれですね、
小学校の図書館なんかに偉人の伝記みたいなのありましたよね、シュバイツァーとかエジソンとかヘレンケラーとか。なんというか、ねっとりとした物語というか。ざっくばらんに言ってしまえば、道徳なるものを無言で押し付けてくるような、そんな感じです。

内村鑑三というのは有名な人ですが、思想的には福沢諭吉や中江兆民よりは落ちるのではないでしょうか。福沢諭吉や中江兆民は民族のエネルギーということを問題にしましたが、内村鑑三は個人のエネルギーを問題にしています。
これは英雄主義です。精神の退化です。
歴史を個人に還元しようとすることは、歴史を簡単に考えてしまう態度につながってきます。例えばですよ、太平洋戦争での一番の悪人は東条英機ということになるでしょう。しかし東条英機の言行録というのを読んでみても、彼が異常人格者ということは言えないですよ。律儀で細かくてまじめな日本人という以外の判断は出来ません。

内村鑑三は1861年生まれです。明治維新の時には7歳ということになりますか。福沢諭吉や中江兆民のように明治維新のときに青年だった人間、すなわち一身にして二生を生きた人間より格が落ちるということなのでしょう。