この浅野裕一という人、かなりアグレッシブな感じで、学会で浮いているのではないかと心配しています。この本は春秋戦国時代の11の学派を簡単に解説するというものなのですが、孔子のことはボロクソに書いてありました。斬新な孔子観だと思います。

私は、今のこの世界は中国の春秋戦国時代と同じだと思うのです。春秋戦国時代は七つの大きな国が400年にわたり自らの存亡をかけてお互いに争っていました。戦国時代に入ると、諸子百家とよばれるさまざまな論理体系をもつ人間集団が活躍します。その諸子百家には大きく分けて2系統あって、

ひとつは、中国を統一に導こうとするもの、
もうひとつは、中国の統一を拒否して、七国並立の現状維持を目指すもの、

に分けられます。

墨子や公孫龍は後者に属します。墨子は兼愛を説き、公孫龍はプラトン的論理学を説きます。
これを現代に当てはめて考えるなら、現代日本人になじみの深い人権や科学的思考というものは現状維持の論理ということになります。
私達はイラクやウクライナの現状をみて、
「彼らはもっと人権や科学的思考を大事にすればいいのに。そうすれば日本のように平和になるのに」
なんて考えがちです。しかしそれは現状維持の論理なのです。かれらはおそらく統一を望んでいるのでしょう。統一なくして平和なしです。しかし統一を望む論理というのはグロテスクになりやすいのです。

私達はよく考えなくてはいけない。ぬるま湯の現状維持化、グロテスクな統一か。
トータルで考えれば、ぬるま湯の方が幸せですよ。