「孟子」騰文公下第33章。

漢文の読み下し文というのは日本独特のものでしょうが、硬骨な感じがいいですよね。

斉人に一妻一妾にして、室に居る者あり。
斉の国に一人の妻と一人の妾をもった人がいた。

この現代文は私が勝手に訳しているのですが、これは誰が訳しても、村上春樹が訳したとしても、漢文の引き締まった感じにはかなわないと思います。

旦那はまずまずのお金を家に持って帰るのです。旦那は家で自慢するのですよ、
「俺って会社で頼りにされちゃって」
しかし妻は家に旦那の上司や部下が遊びに来た事がないのを不思議に思って、旦那が会社でどんな風に働いているのかこっそり見に行く事にしました。

而(しか)れども未だかつて顕者の来ることあらず。吾まさに良人のゆく所をうかがわんとす。

漢文で書くと、妻のげすい行動も許せちゃう気になってきます。

会社での旦那の様子を、妻はこっそり覗き見します。旦那は家ではえらそうな事を言っているのに、会社では誰にも相手にされてない風で全く情けない限り。これが真実の旦那の姿だったのです。妻は家に帰って妾に愚痴るのです。
「あの人があんなに情けない人だとは思わなかった」
と。妻と妾はお互い抱き合って、旦那の情けなさを嘆いていました。
そこに何も知らない旦那が返ってきていつものように言うのです。
「きょうも俺、会社のみんなに頼りにされちゃってさー・・・」

而るに良人は未だこれを知らざるなり。施施(しし)として外より来り、その妻妾に驕れり。

孟子を現代風に訳してみました。今でもありえる話です。
この話に孟子は寸評を加えるのです。

「君子から見れば、お金や出世を求めてあくせくする人間なんていうのは、この妻妾のように抱き合って泣かずにはいられないようなものだ」

すばらしい切れ味。
孟子、うまいこと言いますね。